今や富士フイルムの一眼カメラの代名詞とも言える、「フィルムシュミレーション」
富士フイルムの伝統的な写真フィルムの色味や階調を、デジタルの世界で再現してくれる素晴らしい機能です。
そんなフィルムシミュレーションにおいて、現時点で最新の「REALA ACE(リアラエース)」
GFX100IIから新たに搭載され、X-T50などの最新機種はじめ、ファームウェアアップデートでX-T5などでも利用ができるようになり、多くの富士フイルムユーザーから注目を集めています。
そんな最新フィルムシュミレーションである「REALA ACE」について、本記事ではその特徴から実際の映りまで、他のフィルムシュミレーションとの色合いも比較しながら深堀りしてみたいと思います。
それでは早速フジの最新フィルムシュミレーション「REALA ACE」にフォーカス!
「REALA ACE」の特徴と開発背景
REALA ACEの真価を理解するためには、まずそのルーツと、現代のデジタルフィルムシミュレーションとしてどのような役割を担うために開発されたのかを知ることが重要です。

30年の時を経てデジタルで蘇った「REALA ACE」のDNA
REALA ACEという名称は、1990年代に登場し、多くのプロ・アマチュア写真家から愛されたカラーネガフィルム「FUJICOLOR REALA ACE」に由来しています。
このオリジナルのREALA ACEが持っていた最大の特性は、極めて忠実な色再現性(特に自然な肌色表現)と、広い露出許容度(ダイナミックレンジの広さ)でした。
デジタルフィルムシミュレーションとしてのREALA ACEも、そのDNAを色濃く受け継いでいます。
単に過去のフィルムをシミュレートするのではなく、現代のデジタルセンサーの持つポテンシャルを最大限に引き出すために、最新のカラーサイエンスが用いられています。
特に、色の情報量を落とすことなく、ハイライトからシャドウまで粘りのある階調表現を実現するアルゴリズムが採用されており、高コントラストな環境下でも白飛びや黒潰れを抑えることを目的としています。
この特性は、特にJPEGの「撮って出し」で完成度の高い画質を求めるユーザーにとって、非常に価値のあるものです。
スタンダードと比較した「REALA ACE」の特徴
フィルムシュミレーションの特徴を説明する際に、まずデフォルトとも言える「PROVIA(プロビア)」との比較を説明するのが分かりやすいかもしれません。
PROVIAは富士フィルムのフィルムシュミレーションにおける基本とも言うべきデフォルトの立ち位置。
富士フイルム公式サイトにおいて、PROVIAのキーワードは「記憶色」と「透明感」と謳っています。
つまり「人の記憶に残るような鮮やかで美しい色」を意識して再現しているフィルムシュミレーションです。
それに対しREALA ACEは「記憶色」に頼らず、見たままの色を忠実に再現することを目指したフィルムシュミレーションと言うことができます。
ハイライトからシャドウまで、なめらかな階調を表現し写真に奥行きを与え、特定のシーンに特化することなく、日常のスナップから風景、ポートレートまで、あらゆるシーンで美しい写真を撮影できることを目指している事がうかがえます。
【実写比較】REALA ACEが描き出す世界
それでは、この最新フィルムシミュレーション「REALA ACE」が、実際にどのような描写を見せてくれるのか、フィルムシミュレーションの中でもスタンダードなPROVIAをはじめ、定番かつ使用頻度も高いと思われるものと比較しながら見ていきましょう。
今回は、REALA ACEの特性をより明確にするため、以下の条件及びフィルムシミュレーションと比較を行います。
なお作例は筆者撮影による拙い写真ですが、ご容赦ください。
【カメラ設定】
- すべての写真は、RAWデータに富士フィルムの現像ソフト「FUJIFILM X RAW STUDIO」と同社カメラ本体を接続することで可能なフィルムシュミレーションを反映させる(本体は筆者所有のX-T5)
- 露出は撮影時のデータそのまま
- ホワイトバランスAUTO
- 各種エフェクトは全てオフ
- ハイライト、シャドウ、カラー等のトーン調整は全て0値
- 以上の設定で色味と階調をフラットな状態とし、JPEG書き出しを行う
【比較フィルムシュミレーション】
- PROVIA/スタンダード
富士フイルムの基準となる標準的な色味 - Velvia/ビビッド
高彩度で鮮やかな色味 - クラシッククローム
落ち着いた発色と深みのある色合い - クラシックネガ
昔のネガフィルムのような、コントラストを抑えた表現
【比較】対:PROVIA/スタンダード
まずはフィルムシュミレーションの基本となるPROVIA/スタンダードとの比較です。
写真中央のスライダーを動かして、それぞれのフィルムシュミレーションとの違いを確認してみましょう。
PROVIA/スタンダードに比べてやはり彩度は低めで、より見た目に近い自然な発色と感じます。
中央の赤いグラスに注目すると、PROVIAより色の階調がより滑らかに表現されている事がよく分かると思います。
REALA ACE(リアラエース)は緑の発色に若干黄色が入るような発色。
これがより見た目に近い自然さを感じさせてくれると思います。
人形の赤の発色も彩度が抑えられて、ハイライトとシャドウのコントラストで見た目に近い立体感が感じられます。
提灯の青に注目。
青は意外と濃いめに発色することが分かります。
REALA ACEは彩度が抑えられているだけに、露出調整はもう一段下げても良かったかな?という一枚・・・
柿の黄色はPROVIAでは、しっかりとしたコントラストが生かされ、立体感がより強調されていると感じます。
逆にREALA ACEは滑らかな階調。
PROVIAもやはり良い。
【比較】対:Velvia/ビビッド
次にフィルムシュミレーションにおいて、鮮やかな発色とメリハリある諧調が特徴のVelvia/ビビッドとの比較です。
ボトルのラベルに注目すると、さすがVelviaのビビッド感と思わされる一枚ですが、よく見ると提灯の写真と同じく、青はREALA ACEの方が発色が強い事が改めて分かります。
こちらもREALA ACEは空の青がしっかり強調されているも、緑は抑えられてハイライト強めな表現。
たしかにこの日はとても晴れていて、光も強めなのでハイライトが強調されるのが自然な見た目。
それを再現していると思うと妙に納得させられる一枚かと。
もうこちらは好みの問題でしょうか。
このような風景写真では、やはりVelviaの彩度とコントラストが活きてくると感じますね。
【比較】対:ClassicChrome(クラシッククローム)
クラシッククロームとはやはりシャドウの強弱を感じます。
ガラスの奥の机や壁など、クラシッククロームはしっかりシャドウが強調されますが、REALA ACEは柔らかい階調となるのが分かります。
こちらもシャドウの出方とコントラストの違いが分かる一枚かと思います。
ちょっと暗い雰囲気の作例になってしまった・・・
【比較】対:ClassicNeg(クラックネガ)
みんな大好きクラシックネガとの比較。
やっぱりこんなちょっと渋いシーンは、クラシックネガがいい仕事します。
でもREALA ACEの滑らかな階調も捨てがたい。
クラシックネガはハイライトにマゼンダ、シャドウにグリーンが薄っすら乗る特徴がよく現れている一枚。
REALA ACEの写実性もよく分かる比較写真かと思います。
あなたはどちらが好みでしょうか。
光の表現がこうも違うのかと思わされる一枚。
レンズの性能も影響しているかもしれませんが。柔らかな光が猫を包み込む感じは、REALA ACEがとても自然な感じで表現していると感じます。

まとめ
いかがでしたでしょうか。
こうして実際に各フィルムシュミレーションと比較してみても、REALA ACEの万能性を気付かされます。
比較の作例に対しても、「ちょっとこれ違うな・・・」ではなく、逆に「これも有りだな」と思えるフィルムシュミレーションだと思うのですがいかがでしょうか。
REALA ACE(リアラエース)はPROVIA(プロビア)と同じく「迷ったときはとりあえずこれ」として使えるニュースタンダードとも言うべき存在になり得ると思います。
筆者が次にREALA ACEを試してみたいのは、朝焼けや夕日のシーンです。
自然で粘り強いと言われる階調を期待して試してみたいなと、個人的に思いました。
皆さんはどのように感じましたでしょうか。
またREALA ACEを起点に、カスタマイズした色合いも期待できると思います。
フィルムシュミレーションのカスタマイズについても、別の記事を投稿していますので、参考にしてみてください。
今回は作例を多めに掲載致しましたが、少しでも参考にして頂き、フィルムシュミレーションの楽しさを共有してもらえたら幸いです。
「フィルムシュミレーション」楽しみましょう!



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