カメラを購入するとき、多くの人が本体やレンズにはこだわりますが、意外と見落としがちなのが「SDカード」の選び方です。
実は、SDカードはカメラの性能を引き出すために欠かせない重要パーツ。
間違ったカードを選ぶと、連写が途切れたり、動画撮影が止まったりといったトラブルも起こります。
この記事では、カメラ撮影における最適なSDカードの選び方を、できるだけ分かりやすく紐解いていきたいと思います。
それでは「SDカードの選び方」にフォーカス!
なぜSDカード選びが重要なの?
結論、「一眼カメラの性能を最大限に引き出す」ためです。
近年のカメラは、高画素化や高速連写、4K・8K動画撮影など、高性能な機能が数多く搭載されています。
これらの優れた機能をフル活用するためには、カメラが生成する膨大なデータを迅速かつ安定して記録できるSDカードが不可欠です。
SDカードの書き込み速度が遅いと、せっかくの高速連写が途中で止まってしまったり、動画撮影が意図せず中断したりするリスクがあります。
SDカードは単なるデータの保存場所ではなく、カメラの能力を引き出す上でのボトルネックとなり得る、非常に重要な要素なのです。
SDカードの基本を理解する【規格・容量・速度の基礎知識】
では自分のカメラや機器に最適なSDカードってどこを確認すればいいの?ということになりますが、それにはまずSDカードの規格や容量、そして速度といった基本的な仕様を理解する必要があります。
最初は私もSDカードなんて容量の違いだけで、みんな同じようなものだと思っていました。
しかし細かく調べてみると、こんなに仕様に違いがあるのか…と驚いた事を思い出します。
少し専門的なワードもありますが、まずはSDカードの仕様についてみていきましょう。
規格の違いを理解する
SDカードには、容量によって「SD」・「SDHC」・「SDXC」・「SDUC」という4つの規格が存在します。
まずはこれらの規格を理解することから始めましょう。
それぞれの説明は以下のようになります。
- SD (Standard Capacity)
-
最大2GBまでの容量に対応した最も古い規格です。
現在ではほとんど使われていません。 - SDHC (High Capacity)
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4GBから32GBの容量に対応する規格です。
多くのカメラで普及している規格です。 - SDXC (eXtended Capacity)
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64GBから2TBまでの大容量に対応する規格です。
高画質の静止画や動画撮影のニーズに応えるため、現在主流となっています。 - SDUC (Ultra Capacity)
-
4TB以上の超大容量に対応する将来的な新規格です。

このように主に記録容量によって規格があり、名称も正式には上記のように命名されています。
上記の説明からすると「SDカード」というと、正式には2GBまでのカードを指します。
※ただしこの記事では説明上、これらの規格すべてを指す意味においては「SDカード」として表記させて頂きます。
互換性について
互換性については、SDXC対応のカメラであればSDHCやSDカードも使用できますが、SDHC対応のカメラではSDXCカードは使用できないため注意が必要です。
後ほど書き込み速度に関する規格についても触れますが、カメラはもちろんSDカードを使用する機器を選ぶ際には、必ずSDカードの対応規格を確認しましょう。
【容量】の選び方:撮影スタイル別の目安
撮影する被写体や撮影スタイルによって、適切なSDカードの容量は異なります。
ご自身の撮影スタイルに合わせて容量を選ぶことも大切となります。
以下、撮影スタイルによる保存容量の目安となります。
- 静止画中心の日常使い
-
32GB〜64GB
撮影が静止画中心で、JPEG撮影中心の日常的な撮影には十分な容量です。 - RAW撮影や高画質重視
-
64GB〜128GB以上
カメラが高画素機(4000万画素以上など)だったり、更に記録形式をRAWに設定していたりする場合推奨する容量です。
JPEGデータに比べ、RAWデータは画像の情報量が多くデータ容量が大きいため、このくらいの容量があると安心です。 - 4K動画撮影
-
128GB〜256GB推奨。
4K動画は非常にデータ量が大きいため、撮影時間にもよりますが、これくらいの容量があると安心です。
逆にこのくらいの容量がないと十分な撮影が厳しい場合が多いです。 - 8K動画撮影
-
256GB〜512GB以上
1分間で約10GB以上のデータが生成されることもあるため、超大容量のSDカードが必須となります。
【速度】の選び方:「スピードクラス」の種類と意味
SDカード選びにおいて最も重要かつ難解と思われるのが、スピードに関する部分です。
SDカードの記録速度は、カメラの連写や動画撮影の性能をフルに活かせるかの重要なカギとなります。
特にカメラの性能において、近年急速に高解像度化が進む写真の高速連写や、4K/8Kといった高精細動画の撮影では、膨大なデータを連続して記録する必要があります。
その際、SDカードのデータ書き込み速度がシステム全体のボトルネックとなり、コマ落ちや録画の途絶といった問題を引き起こす可能性が高まります。
このような課題を解決し、デジタルデータ記録の安定性を保証するために策定されたのが「スピードクラス」規格です。
この規格は、SDカードが保証する最低書き込み速度を示す指標であり、ユーザーがそれぞれの用途に合致した適切なカードを選択するための重要な基準となります。
「スピードクラス」の内容を理解し、用途に合った速度のSDカードを選びましょう。
- SDスピードクラス (Class 2, 4, 6, 10)
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最も初期に策定されたスピードクラスであり、主にSDHCカード以前の製品を選択する際の基準として用いられました 。この規格では、数字が直接、最低書き込み速度(MB/秒)を表します。例えば、「Class 10」は最低10MB/秒の書き込み速度を保証するという意味です。
- UHSスピードクラス (U1, U3)
-
UHSスピードクラスは、UHS(Ultra High Speed)バスインターフェースに対応したSDカードで使用され、主に動画撮影時の安定した記録性能を示します。
この規格には「UHSスピードクラス1(U1)」と「UHSスピードクラス3(U3)」の2種類があります。
「U1」は最低10MB/秒、「U3」は最低30MB/秒の書き込み速度を保証します 。
特にUHSスピードクラス3は、4K動画撮影に最適な規格とされています 。
これらのUHSスピードクラスは、UHSバスインターフェース製品(UHS-I, UHS-II, UHS-III)に実装可能です 。 - ビデオスピードクラス (V6, V10, V30, V60, V90)
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4Kや8Kといった高画質・高品質映像の記録ニーズに応えるため、2016年に策定された動画撮影に特化した比較的新しい規格です 。
この規格は、書き込み速度のばらつきを抑え、コマ落ちなく安定した動画撮影を可能にするためのバッファサイズや書き込み速度を包括的に網羅しています 。
記号の「V」の後ろに続く数字が最低書き込み速度(MB/秒)を表し、例えば「V30」は最低30MB/秒を保証します 。V6およびV10はハイスピードおよびUHSバスインターフェース製品に、V30はUHSバスインターフェース製品に、V60およびV90はUHS-IIおよびUHS-IIIバスインターフェース製品に実装可能です 。

データ通信の【道路】バスインターフェースを理解しよう
これまでの説明の中に「バスインターフェイス」という言葉が出てきて、何じゃい?と思われた方も多いでしょう。
SDカードと、それを使うデバイス(カメラやスマホ、パソコンなど)の間で、データは電気信号としてやり取りされています。
このデータの通り道、つまり「道路」の規格が「バスインターフェース」です。
想像してみてください。SDカードが「荷物を積んだトラック」、デバイスが「荷物を受け取る倉庫」だとします。
トラックがどんなに速く走れても、道路が狭くてボコボコだったら、荷物はなかなか倉庫に届きませんよね?
SDカードも同じで、カード自体がどんなに高速な性能を持っていても、この「道路(バスインターフェース)」が対応していなければ、そのスピードをフルに発揮できないということになります。
バスインターフェイスの種類を見てみよう!
SDカードのバスインターフェースには、いくつかの種類があります。
技術の進化とともに、より速く走れる「道路」が作られてきたと思ってください。
- 標準スピード / ハイスピード
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SDカードの初期からある基本的な「道路」です。
一般的な写真や標準画質の動画を保存するのに使われます。SDカードの裏面にある「ピン(金属の端子)」が1列のタイプがこれに当たります 。 - UHS-I(ウルトラハイスピード・ワン)
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より高速なデータ転送を可能にするために登場した「高速道路」です。
最大で1秒間に104MB(メガバイト)のデータを転送できます。これもSDカードの裏面のピンは1列のままです 。多くのデジタルカメラやスマートフォンがこのUHS-Iに対応しています。 - UHS-II(ウルトラハイスピード・ツー)
-
UHS-Iよりもさらに速い「超高速道路」で、最大で1秒間に312MBものデータを転送できます。
UHS-II対応のSDカードは、裏面のピンがもう1列追加されて2列になっているのが特徴です 。
この追加されたピンのおかげで、より多くのデータを同時にやり取りできるようになり、圧倒的なスピードを実現しています 。
特に、4Kや8Kといった高画質動画の撮影や、一眼レフカメラでの高速連写には、このUHS-II対応のSDカードとデバイスの組み合わせが威力を発揮します 。 - UHS-III(ウルトラハイスピード・スリー)
-
UHS-IIをさらに進化させた「さらに速い超高速道路」です。
最大で1秒間に624MBのデータを転送できます。これもUHS-IIと同様に、裏面に2列のピンがあります 。8K動画やVR(仮想現実)など、さらに大容量のデータを扱う次世代の技術に対応するために開発されました 。 - SD Express(エスディー・エクスプレス)
-
これはSDカードの最新規格で、まるで「新幹線」のような超高速転送を実現します。
パソコンのSSD(高速ストレージ)で使われている技術(PCI ExpressやNVMe)を取り入れているため、最大で1秒間に985MBから3940MBという驚異的な速度が出せます。
これもUHS-IIやUHS-IIIと同様に、裏面に2列のピンが追加されています 。

SDカード選びの黄金ルール:デバイスとカードの「道路」を合わせよう!
SDカードを選ぶ上で、最も大切なポイントは、「SDカード」と「使うデバイス(カメラやスマホなど)」の両方が、同じバスインターフェースに対応しているかを確認することです 。
例えば、あなたがUHS-II対応のSDカードを買ったとします。
でも、もしあなたのカメラ側がUHS-Iにしか対応していなかったら、そのSDカードはUHS-Iの速度でしか動きません 。これだとせっかくの超高速性能が宝の持ち腐れになってしまいます。
SDカードの規格は、基本的に古い規格のデバイスでも使えるように「下位互換性」が保たれています 。
つまり、UHS-IIのSDカードをUHS-Iのデバイスに入れても壊れることはありませんが、UHS-II本来のスピードは出ない、ということになります。
迷ったらこれを選べ!撮影スタイル別SDカード選定
ここまで小難しいSDカードの仕様について説明してきましたが、いざこれらを自分の撮影スタイルに当てはめて選べと言っても、多くの方が訳わからん状態かと思います。
そこで撮影スタイル別に選ぶべきSDカードのスペックを簡潔明瞭に説明したいと思います。
あくまで一般的に推奨されるスペックですので、それぞれの撮影の仕方で過不足が出てくる可能性もあることをご承知おきください。
撮影スタイル別推奨スペック
推奨スペック
- 容量: 64GB~128GB
- 規格: SDXC
- バスインターフェイス: UHS-I
- スピードクラス: Class 10 + U1 + V30
- 転送速度: 読み取り90MB/s以上
1枚1枚丁寧に撮影するスタイルなら、極端な高速性能は不要。コストパフォーマンスを重視しながら基本性能を確保。
推奨スペック
- 容量: 128GB~256GB
- 規格: SDXC
- バスインターフェイス: UHS-II 必須
- スピードクラス: Class 10 + U3 + V60以上
- 転送速度: 読み取り300MB/s、書き込み250MB/s以上
高速連写でカメラのバッファがすぐに満杯になるため、高速書き込み性能が必要。
書き込み速度250MB/s前後以上が高速連写向きとされています。
推奨スペック
- 容量: 128GB~512GB
- 規格: SDXC
- バスインターフェイス: UHS-II推奨
- スピードクラス: V30以上必須 (V60推奨)
- 転送速度: 書き込み30MB/s以上の持続性能
4K動画は大容量かつ持続的な書き込み速度が必要。
4K動画撮影にはビデオスピードクラスV30以上が推奨されています。
推奨スペック
- 容量: 256GB~1TB
- 規格: SDXC
- バスインターフェイス: UHS-II 必須
- スピードクラス: V90必須
- 転送速度: 読み取り300MB/s、書き込み290MB/s以上
8K動画は最低90MB/sの持続書き込み速度が必要。安全マージンを考慮してV90規格を選択。
SDカード主要メーカー
SDカードは同じスペック表記でも、メーカーによって品質や耐久性に差があることが実際にあります。
粗悪なSDカードは、データが破損したり、書き込みエラーが頻発したりするリスクがあります。
特に、連写や高画質の動画撮影をする際には、メーカーの技術力が問われます。
信頼性の高いメーカーは、厳しい品質基準に基づいて製品を製造しており、大切なデータを守る上で欠かせません。
メーカー選びもSDカード及びカメラの性能を十分に発揮するうえで重要な要素となってきます。
ここでは筆者が調べて、信頼性の高い主要なSDカードメーカーを列挙しておきますので、参考にしてください。
SDアソシエーション設立メーカー
SDカードの規格を策定・推進するために設立された団体であるSDアソシエーション。
その設立メンバーである以下の3社は、SDカードの品質と信頼性において最も評価されています。
- サンディスク(SanDisk)
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メモリーカードの世界シェアNo.1を誇るトップメーカー。SDカード、microSDカードの規格策定にも携わっており、プロのクリエイターから一般ユーザーまで幅広く支持されています。スタンダードモデルからプロ向けの高性能モデルまで、非常に豊富なラインナップを揃えています。高耐久性をうたったドライブレコーダー向け製品も人気です。
備考: 現在はWestern Digital社のブランドです。 - キオクシア(KIOXIA)
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旧東芝メモリ。フラッシュメモリの技術開発から携わってきた日本国内メーカーです。
フラッシュメモリ市場で世界的に高いシェアを誇り、技術力の高さに定評があります。
国内メーカーを信頼したい方や、長期保存を目的とする場合に特に推奨されます。 - パナソニック(Panasonic)
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世界的な家電メーカーであるパナソニックもSDカード規格の設立メンバーであり、高い信頼性を誇るメーカーです。特に、カメラとの相性が良いとされており、安定した動作が期待できます。
その他主要メーカー
- プログレードデジタル(ProGrade Digital)
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「速くて誠実」な姿勢で、プロカメラマンを中心に高い信頼を獲得しています。
公称速度を上回る実測値が出ることが多く、安心して使用できるという声が多数あります。
特に、高速連写後のバッファ開放速度の速さや、高ビットレートの動画撮影時の安定性が高く評価されています。
お値段は高めな印象…。 - サムスン(Samsung)
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フラッシュメモリを内製しており、高い技術力を誇ります。
スマートフォンの分野でも強いため、microSDカードの分野で特に存在感があります。
Amazonのランキングでも上位に入ることが多いです。 - レキサー(Lexar)
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元はマイクロン傘下のブランドでしたが、現在は中国のLongsys社が商標を取得しています。独自の品質テスト「クオリティラボ」で厳格なテストを行っており、プロ向けの製品も多く展開しています。
コスパ良いものからプロ向けの高額製品まで幅広く対応しています。 - ソニー(SONY)
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特にプロ向けのカメラと相性の良いSDカードを製造しています。
ソニーの「TOUGH(タフ)」シリーズは、一体成型で防塵・防水・耐衝撃性に優れており、高い耐久性を求めるユーザーから支持されています。ただしお値段高し。 - ネクストレージ(Nextorage)
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元ソニーのストレージ事業メンバーが設立した企業で、高い技術力と信頼性を持ちながら、比較的安価な製品も展開しています。
特に、プロ向けの高性能モデルが評価されており、最近注目を集めているメーカーです。 - キングストン(Kingston)
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アメリカのメモリー製品メーカーで、PCのメモリなどでも有名です。
SDカード製品も広く流通しており、Amazonのランキングでも上位に入ることがあります。 - トランセンド(Transcend)
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台湾を拠点とするメモリー製品メーカーで、世界中で広く流通しています。
高品質でありながら比較的安価な製品が多く、コストパフォーマンスを重視するユーザーに人気です。
まとめ
カメラの性能を最大限に引き出すために
冒頭でもお伝えしたように、SDカードは単なるデータの記録媒体ではなく、カメラの性能を最大限に引き出し、大切なデータを守るための重要なパーツです。
そのためにSDカード選びはとても重要な要素ということを、ご理解頂けたでしょうか。
最後に選び方のステップをまとめて締めくくりたいと思います。
最適なSDカードを選ぶための3つのステップ
- 1.カメラの対応規格を確認する
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まずご自分のカメラもしくはこれから購入しようとするカメラが、どの規格に対応しているか確認します。
◎容量による規格 :SD、SDHC、SDXC
◎スピードクラス :SD、UHS、ビデオの各対応スピードクラス
◎バスインターフェース:UHS-Ⅰ、UHS-Ⅱ - 2.撮影スタイルに合わせて容量と速度を選ぶ
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どのような撮影を主に行うのか(静止画、連写、動画など)を考慮し、最適な容量と速度(スピードクラス)のSDカードを選びます。
- 3.信頼性が高いメーカーを選ぶ(価格との相談も)
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信頼性の高いメーカーの製品を選び、極端に安価なものなど偽造品回避を心がけましょう。
以上となりますが、いかがでしたでしょうか。
この記事を参考にご自身のカメラと撮影スタイルに最適なSDカードを見つけて、安心で快適な撮影ライフを楽しんで頂ければと思います。
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